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安藤 仁

教授挨拶

 2016年3月に細胞分子機能学研究分野の教授に着任しました安藤と申します。

 

 近年、医学の進歩に伴い、医療は著しく向上しました。その中心的な役割を担っているのが「くすりを使った治療(薬物療法)」であり、生体の機能や病気の発症メカニズムの解明に伴って、新しい治療薬が次々と開発されてきました。しかし、医学には未だ不明な点が多く、医療には様々な限界が残されています。薬物療法においても、治療効果が不十分である(そもそも治療薬がない)、重大な有害反応(副作用)を防ぐことができない、といった問題点があります。また、様々なくすりが登場したことにより、医師がくすりを適正に使用するためには、より多くの知識が必要とされるようになりました。このように、医療が発展し多くの病気を治療できるようになった今、薬理学や薬理学教育の重要性はさらに高まってきています。

 そこで、当教室では、

「病態のメカニズムを解明し創薬シーズを探索する研究」

「くすりの適正使用を明らかにする研究」

などの薬理学研究を強力に推進してまいります。

 また、旧薬理学教室(分子情報薬理学)・吉本谷博教授の後を受け、医学類生がくすりを適正に使用できる医師になれるよう、薬理学教育にも注力してまいります。

 当教室では、研究を active かつ attractive に展開するために、多くの意欲ある学生(学類生・大学院生)・研究生に一員になっていただきたいと思っています。また、様々な研究者や企業との共同研究も積極的に行いたくと考えています。関心のある方々のご参加をお待ちしています。

研究内容

当教室では、創薬シーズの探索ならびに医薬品の適正使用のために、次の基礎・臨床研究を中心に行っています:

1) 体内時計障害による生活習慣病発症機序の解明と体内時計制御薬の開発

 私たちの体のほとんどの細胞には時計遺伝子群で構成される体内時計が備わっており、この体内時計が24時間の時を刻むことにより、様々な生理機能の恒常性を維持しています。近年、体内時計の障害は、2型糖尿病、高血圧、癌などのいわゆる生活習慣病の発症につながることが、私たちを含めた多くのグループの研究により明らかになってきました。現代は24時間社会となっており、体内時計障害は生活習慣病の急増の一因であると考えられます。そこで私たちは、体内時計障害が生活習慣病を惹起する機序を解明し、生活習慣病の予防・治療に有用な体内時計制御薬を開発することを目指します。

4) 時間薬理学研究

 一般的に、薬の体内動態や感受性には日内リズムが認められるため、薬の有効性や安全性は投与時刻によって変化します。そこで、薬の有用性を向上させるために、日内リズムをもたらす分子機序を解明するとともに、それぞれの薬にとっての最適な投与時刻を明らかにします。

5)その他の薬理学研究

 その他、様々な病態や医薬品に関する基礎・臨床研究を実施しています。

2) 非アルコール性脂肪肝炎の発症機構の解明と治療薬の開発

 肝臓は生体の糖・脂質代謝において中心的な役割を果たしています。近年、肝臓におけるインスリン抵抗性は肥満や2型糖尿病などの生活習慣病だけでなく、脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis: NASH)、および肝がん等、様々な病態の基盤となることが明らかになってきました。私たちは肝臓におけるインスリンシグナル伝達を制御する鍵分子としてタンパク質チロシンフォスファターゼ(Protein tyrosine phosphatase: PTP)に注目しています。現在、遺伝子改変マウスを用いて糖・脂質代謝、肝臓における炎症と肝発がんにおけるPTPの役割を解析しています。

3) 脂質メディエーター・スフィンゴシン1-リン酸の生理的・病態生理的意義を明らかにする研究
 
 スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は、細胞の増殖や分化、炎症、免疫など様々な生命現象の制御に関わっている脂質メディエーターです。通常、S1Pは、生体内では微量しか存在していませんが、がんや肥満など特定の疾患では存在量が増加することが知られており、様々な疾患の発症や増悪にS1Pが関わっていると考えられています。私たちは、特に肥満や脂肪肝との関連に着目しており、遺伝子改変マウスを用いた研究などにより、S1Pの生理的・病理的意義を解明し、治療薬の開発を目指しています。また、
疾患のバイオマーカーにもなる可能性があるため、簡便で高感度な分析法の開発も進めています。

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